交際費
一般的に「交際費」とは、事業に関連のある者等に対して
取引関係を円滑に行う事を目的とした接待等の行為をいいます。
この「交際費」は、その支出額について会計上※は個人事業も法人も
ともに費用となります。
しかし、税務上※は、個人事業と法人とでその取り扱いが異なります。
※一般的に「会計上」とは、経営成績(=事業を行った結果)である利益又は損失
を計算する上での取り扱いのことをいいます。
また、「税務上」とは、税金を計算する上での取り扱いのことをいいます。
ちなみに、会計上で「収益・費用」に相当するものを、税務上ではそれぞれ「益金・損金」
と呼びます。
個人事業については、その支出が業務上のものであれば会計上も税務上も
全額費用として認められます。
しかし、法人については、会計上で費用として計上した交際費の額が
そのまま税務上の損金(=税務上の費用)の額になる訳ではありません。
つまり、会計上の交際費の全額又は一部が損金として認められないのです。
その理由を簡単に言うと、経費の無駄遣いをするな、とのことらしいです。
では、それぞれどのような場合なのか?
それは、法人の期末資本金額によって区分されています。
①期末資本金額が1億円超の法人
⇒交際費の全額が損金として認められない
②期末資本金額が1億円以下の法人
⇒下記の算式の金額が損金として認められない
(交際費の支出額-600万円)+600万円×10%=損金として認められない金額
※交際費の支出額が600万円以下の場合はその支出額×10%
つまり交際費の支出額が、600万円以下ならその金額の90%、600万円を超える
場合は540万円(600万円×90%)が損金になるということですね。
※この制度は、平成24年3月31までに開始する各事業年度について適用されます。
個人事業における交際費は業務上のものであれば全額費用になるため
特に問題はないかと思いますが、問題は法人の場合です。
法人の場合は、支出した金額がそのまま損金(=税務上の費用)となる訳では
ありません。
この「交際費の範囲」の理解が、税金を計算する上で重要になってきます。
一見、「交際費」の様でも実はそうでなかったり、またはその逆の場合もあるため
法人の支出が交際費になるのか、または別科目で処理をするのかにより
税金の額が異なります。
〇実は「交際費」ではないもの
・取引の打ち合わせ・会議などのための飲食物の提供に関する費用
⇒「会議費」
・自社名の入ったカレンダーやタオルなどの物品を贈与するための費用
⇒「広告宣伝費」
※これらは全額が損金になりますので、 これを交際費として処理してしまえば
税金が多くなってしまいます。
〇「交際費」とみなされるもの
・接待のためのタクシー代などの支出(相手先の送迎のみならず、同乗した場合や
接待をした従業員の帰宅のための支出も含みます)。
⇒「交通費」ではなく「交際費」
・特定の社員や役員に対する忘年会費用などの支出
⇒「福利厚生費」ではなく「交際費」(※給与とみなされる場合もあります)
※これらについては、その全額又は一部が損金になりません。
もし、これらのものを交際費としなかった場合は税務調査にて指摘される
こともあります。
以上、代表的な項目を簡単に挙げてみました(詳しく書けば、まだまだ沢山あります)。
このように「交際費の範囲」について、知っていれば得をしたり、気をつけなければ
ならない点などもあります。
みなさんも、内容をしっかり確認するように心掛けましょう。
さて次に、接待などの飲食費についてその支出額の全額を
損金として処理することができるものをお伝えしたいと思います。
これは、資本金額などの大中小法人の区分に関係なく規定されています。
ただし、交際費として支出した全ての飲食費がすべて損金として処理できる訳ではなく
下記の要件全てに該当するものが対象となります。
1.取引先などの社外の人間との飲食費であること
注意点
・自社の役員や従業員又はこれらの親族の接待のための支出は対象外!
2.一人当たり¥5,000以下の飲食費であること
注意点
・その支出額を参加人数で割った金額が一人当たり¥5,000以下であること
(もし¥1でも超えれば、その支出額の全額が対象外! ¥5,000を超えた金額部分ではない!)
・手土産などをのぞいた金額で判断できます。
・税込金額?又は税抜金額?
会社の経理方法が、税込経理であれば税込金額にて、税抜経理であれば税抜金額で判断!
・一次会、二次会など連続して行った場合は、それぞれの場所の支出額により判断できます。
3.証拠となる書類を残すこと
注意点
・領収書だけではダメ!
以下の内容を記載した書類の保存が必要
・飲食等のあった日
・参加した取引先や仕入先等事業関係者の氏名及び名称とその関係
・参加人数
・その費用の金額並びに飲食店等の名称及び所在地
・その他の参考事項
かなり細かい要件となっていますね。
肝心なのは、こういった支出があった際は、その都度確認をすることです。
「後でまとめて」などと考えていると、参加者の名前や人数など細かな点が不明確になる可能性があります。
・・・だからといって、正確でない記載をしてしまえば「事実の仮装や隠蔽」として重加算税の対象となることも
あります(重加算税だけでなく、延滞税も課されます・・・延滞税って結構恐いですよ!)
また、会計帳簿や会計ソフトに、その他の交際費(支出額の一部又は全額が損金にならず処理されるもの)と
区別して記帳しておいた方が良いでしょう。
その区別が無ければ、決算の時に1年分の資料を洗いなおすか
最悪の場合は、交際費の中でどれが全額損金として処理できるものか分からなくなってしまいます。
そのためにも、別の分かりやすい科目にて記帳したり
又はマーカーや文字の色を変える、会計ソフトの入力設定を変えるなど
あらかじめ経理担当者や顧問税理士と処理方法を決めておいた方がいいでしょう。
確かに記録をその都度残すことは手間がかかり、事務負担が増えます。
ただ、接待の多い企業にとって効果は大きいのではないでしょうか?